【今日でなくてもいいかもしれない今日のひとこと】

・10月28日から開催中の<美の改革者 武智鉄二全集>。
 武智鉄二といっても、あんまりピンと来ないかもしれませんが、ジャパニーズ・カルトの1本とされる『白日夢』の監督ですね。
 といっても『白日夢』を“ジャパニーズ・カルトの1本”にしたのは、ここ10年以内くらいの動きであって、それ以前はこの映画に対してそんな認識はなかったと思います。『白日夢』がジャパニーズ・カルトの1本になったのは、私の認識では、いろんな特集上映の中で映画ファンの間で自然にそうなったというよりは、上映する側にこの映画を強力にプッシュする人がいて、観客の側でもなんとなくそういう風な認識を持たされるようになってしまったという感じですね。
 『白日夢』は、歯医者の治療中にその痛みと恐怖のために女性患者がトリップして夢想しまうというそれだけの映画ですが、原作は谷崎潤一郎だし、マゾや残虐性、幻想趣味といった“ヘンタイ・プレイ”が、耽美主義の名のもとに、“芸術”に昇華されるので、ジャパニーズ・カルトたる素質は十分にあると考えられます。まあ、どんなものか、一見の価値はありますよね。
 それはさておき、この『白日夢』(1964年版)が大井武蔵野館でわりと上映されていたほかは、武智監督の作品を観る機会はこの20年くらいを振り返ってみてもあまりありませんでした。
 『白日夢』の翌年に撮られた『黒い雪』が「猥褻図画公然陳列罪」に問われて、数多くの映画人や文化人などが立ち上がって抗議し、無罪を勝ち取ったという事実は私も知識としては知っていましたが、実際に作品は観たことがありませんでした。
 地上波ではとうてい放映できないような内容の作品ばかりですし、ビデオで鑑賞可能なのもおそらく『白日夢』(1964年版)と『華魁』くらいしかありません。
 今回の特集上映は、『黒い雪』のほか、1981年版の『白日夢』や『白日夢2』も含む10作品の上映です。これをきっかけとしていくつかの作品がDVD化されるという可能性もありますが、なかなか鑑賞機会の少ない作品ばかりなので、全作品必見ですね〜。
 このプログラムのあとが、ヤン・シュヴァンクマイエルの新作っていうのも、流れとして面白いですよね。